消防用設備の点検

点検とは消防用設備等が技術上の基準(消防法第17条)に適合しているかどうかを確認することをいいます。

消防用設備等の点検・報告書は防火対象物関係者の義務です。

 消防法により消防用設備等を設置することが義務づけられている防火対象物の関係者 (所有者・管理者・占有者)は、その設置した消防用設備等を定期的に点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告する義務があります。

  消防用設備等は、特殊なものであり、消防用設備等についての知識、技能のない者が点検を行っても、不備欠陥が指摘できないばかりか、かえって消防用設備等の機能を損なうことも考えられます。

  そこで、防火対象物の規模や消防用設備等の内容により、火災発生時に人命危険の高い特定防火対象物等でその規模が大きい対象物については、消防設備士又は消防設備点検資格者に、 その他の規模の小さい防火対象物については、防火管理者等に点検を行わせることとされています。

  消防用設備等は、いついかなる場合に火災が発生しても確実に機能を発揮するものでなければならないので、日ごろの維持管理が十分に行われることが必要です。 このため、消防法では消防用設備等の点検・報告ばかりではなく、整備を含め適正な維持管理を行うことを防火対象物の関係者に義務づけています。

点検の内容及び点検の方法

点検の内容及び点検の方法は、次のとおりとする。

機器点検
消防用設備等の機能の適正な配置、損傷等の有無その他主として外観から判別できる事項。 消防用設備等の機能について、外観から又は簡易な操作により判別できる事項。
総合点検
消防用設備等の全部若しくは一部を作動させ、又は、当該消防用設備等を使用することにより 、 当該消防用設備等の総合的な機能を消防用設備等の種別等の応じ基準に従い確認すること。
点検の期間
消防用設備等の種類等 点検の内容及び方法 点検の期間
消火器具、消防機関へ通報する火災報知設備、誘導灯、誘導標識、消防用水、非常コンセント設備及び無線通信補助設備 機器点検 6月
屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、 ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、動力消防ポンプ設備、自動火災報知設備、 ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報器具及び設備、避難器具、排煙設備、連結散水設備、 連結送水管、非常電源(配線の部分を除く。)並びに操作盤 機器点検 6月
総合点検 1年
配線 総合点検 1年
報告の期間

 特定防火対象物(映画館、キャバレー、飲食店、百貨店、ホテル、病院、地下街など、不特定多数の人が出入りする建物) については1年に1回、非特定防火対象物(工場、事務所、倉庫、共同住宅、学校、駐車場など)については、 3年に1回、消防長又は消防署長に報告しなければなりません。

点検済票(ラベル)の貼付

  点検済票(ラベル)は、都道府県消防設備保守協会が一定の要件を満たしている点検実施者(表示登録会員)に交付するものです。

点検済表示制度とは・・・
消防用設備等の点検が適正に行われ、機能が正常であるものに、点検済の表示をし、 点検実施者の責任を明確にするとともに防火対象物の関係者、利用者などに維持管理が適正に行われていることを知らせるものです。
点検済票(ラベル)が貼られることによって・・・
点検実施者の責任が明確になり、適正な点検が期待できます。 又、安全のシンボルマークとして、建物利用者に安心感を与えます。
点検結果報告書の様式

  点検の結果の報告は、別記様式第1の消防用設備等点検結果報告書に、消防用設備等の種類等に応じ別に告示で定める 点検票を添付して行うものとする。ただし、消防長又は消防署長が適当と認める場合にあっては、 別記様式第2の消防用設備等点検結果総括表及び別記様式第3の消防用設備等点検者一覧表を添付することをもって足りるものとする。


住宅用火災警報器について

平成18年6月1日から、新築住宅には住宅用火災警報器を取り付けなければなりません。 既存住宅については、最長で平成23年5月31日までに、住宅用火災警報器を取り付けなければなりません。

火災の被害は住宅火災が半数を超え、死亡者数は8割以上が住宅火災によるものです。 住宅用火災警報器を設置してあった住宅の火災は早期発見の為、約1/3に減少しています。(東京消防庁統計)

総務省消防庁ではこうした理由により住宅用火災警報器の設置が義務化されました。
(使用機器は、鑑定合格品に限る。交換期限は、10年以内

住宅用警報器を設置する部屋

寝室及び寝室がある階の階段が設置の対象となります。 市町村条例で台所・その他居室に設置が義務付けられている場合があります。

2階建で寝室が1階の場合

1階寝室に煙感知式の住宅用火災警報器を設置

市町村条例により台所に熱感知式の住宅用火災警報器を設置

2階建で寝室が2階の場合

2階寝室に煙感知式の住宅用火災警報器を設置

2階階段に煙感知式の住宅用火災警報器を設置

市町村条例により台所に熱感知式の住宅用火災警報器を設置


自動火災報知設備のリニューアルについて

自動火災報知設備が下記のいずれかに該当する時期になれば メーカーの専門技術者や専門の診断士に委託して劣化診断を実施することが適切です。

社会的劣化
型式失効により法的不適合が生じたとき
1000㎡を超える増改築により法的不適合が生じたとき
延べ床面積1/2を超える増改築により法的不適合が生じたとき
物理的劣化
設備機器の故障頻度が高くなる傾向が出始めたとき
設備機器の交換部品の入手が困難になったとき
修理が技術的に不可能になったとき
大規模な修繕が必要になったとき
性能が低下し、使用上の安全が維持出来ないと判断したとき
法的耐用年数による物理的寿命

家電製品については、税法上の消却年数ということで、最大10年までの部品保有期間が定められており、 事実上この期間が寿命期ととらえられておりますが、消防用設備等については、寿命の規定がなく、 唯一、社団法人日本火災報知機工業会から示されている「既設の自動火災報知設備の更新について」のみです。

設置後の更新を要するおおよその期間
受信機(リレー式)20年
受信機(R型・電子部品多用機器)15年
発信機20年
煙式感知器10年
熱式感知器15年
ベル20年
性能劣化による物理的寿命

 自動火災報知設備に使用される電気部品の内、下記については、特に経年劣化の進みやすい部品です。

予備電池(ニッケルカドミウム電池・密閉型鉛蓄電池)
この予備電池も化学変化を利用しているので、製造当初より劣化が始まります。
平成7年7月1日のPL法の施行に伴い、日本蓄電池工業会より、下記のような交換の目安が示されております。
ニッケルカドミウム電池5年
密閉型鉛蓄電池3年
信頼性の劣化
機器内のコネクター・基板のソケットやスイッチ・リレーの接点などの金属部分は、 金属材料としての製造段階から表面の酸化が始まり、接触不良などの経年劣化を生じます。
安全性の劣化
電解コンデンサーの経年劣化やコネクターなどの接触不良により、設備が実際の火災時に作動しなかったり、 またその逆に突然誤作動し、防火扉や防火シャッターを作動させ、人身事故に至る可能性もあります。
製品入手困難
電子機器の分野の進歩は近年非常に激しく、特に自動火災報知設備でも多用されているデジタル用のICなどの部品については、 部品メーカーの改廃が激しく、入手困難なものや入手不可能のものが生じております。
修繕限界
近年の設備には、チップ部品や多層基板が使用されており、小型化・軽量化が図られております。
しかし、チップ部品や多層基板を使用したプリント基板で部品不良が発生した場合は、 部品の交換が不可能(交換できたとしてもプリント基板の信頼性がなくなる為)ですので、 プリント基板単位での交換となります。
また、経年劣化により接触不良が多発するようになった場合は、研磨などによる酸化物除去では、 装置としての信頼性確保ができないため、修繕限界と考えざるをえません。
法的不適合による社会的寿命
型式失効
自治省告知に記載された機種のみが対象となり、受信機・感知器・発信機などの機器単体で指定されている為、 設備全てを更新しなければならないというものではない。 また更新の義務については、特定用途防火対象物に限られ、それ以外の防火対象物には設備更新の義務はない。 特定用途防火対象物にあっては、特例の終期までに設備更新を行わなければならない。
延べ床面積の1/2を越える増改築又は模様替え
現行の基準による設備設置が必要となる為、旧基準で設置された設備については、 設備の更新を行わなければならないので注意が必要である。
延べ床面積1000㎡を越える増改築又は模様替え
現行の基準による設備設置が必要となる為、旧基準で設置された設備については、 設備の更新を行わなければならないので注意が必要である。
上記以外の増改築
感知器や発信機・表示灯の増設を必要とする場合、 受信機や配線(電流容量)が適合しているかどうかの調査が必要で、 適合していない場合は設備全体の更新が必要となる。

防火対象物定期点検報告制度

一定の防火対象物の管理について権原を有する者は、 防火対象物点検資格者に防火管理上必要な業務等について点検させ、 その結果を消防長又は消防署長に報告することが新たに義務づけられました。

防火対象物点検資格者は、消防法令に定められている次のような項目を点検します。

防火管理者を選任しているか。
消火・通報・避難訓練を実施しているか。
避難階段に避難の障害となる物が置かれていないか。
防火戸の閉鎖に障害となる物が置かれていないか。
カーテン等の防炎対象物品に防炎性能を有する旨の表示が付けられているか。
消防法令の基準による消防用設備等が設置されているか。

表1の用途に使われている部分のある防火対象物では、表2の条件に応じて防火対象物全体で点検報告が義務となります。

表1
用途
1.劇場、映画館、演芸場又は観覧場
2.公会堂又は、集会場
1.キャバレー、カフェ、ナイトクラブその他これらに類するもの
2.遊技場又はダンスホール
3.ファションマッサージ、テレクラなどの性風俗営業店舗等
1.待合、料理店その他これらに類するもの
2.飲食店
百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場
旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
1.病院、診療所又は助産所
2.老人福祉施設、有料老人ホーム、精神障害者社会復帰施設等
3.幼稚園、盲学校、聾学校又は養護学校
公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの
複合用途防火対象物のうち、その一部が表1の1から7までに該当する用途に供されていれもの
地下街


表2 防火対象物全体の収容人員
30人未満
点検報告の義務は、ありません。
30人以上300人未満
次の1及び2の条件に該当する場合は点検報告が義務となります。
  1. 特定用途(表1の1から7に該当する用途のこと)が3階以上の階又は地階に存するもの
  2. 階段が1つのもの(屋外に設けられた階段等であれば免除)
300人以上
すべて点検報告の義務があります。

消火器の規格改正

近年発生している老朽化消火器による破損事故を踏まえ規格省令の一部改正となりました。

消火器の安全上の注意事項等についての表示が義務付けられました。

住宅用消火器でない旨  例【業務用消火器】
加圧式消火器又は蓄圧式消火器の区別
標準的な使用条件下で使用した場合、安全上支障なく使用できるとした期間又は期限
使用時の安全な取扱いに関する事項
維持管理上の適切な設置場所に関する事項
点検に関する事項
廃棄時の連絡先及び安全な取扱いに関する事項
消火器が適合する絵表示(ISO基準)
普通火災用
油火災用
電気火災用

規格省令の改正に伴う型式失効

2012年1月1日より旧型式の消火器は型式失効となり、猶予期間の2022年1月1日までに新規格の消火器に交換が必要です。